「エコキュートの無料点検に伺いました」──そう名乗る訪問業者によるトラブルが全国で報告されています。
大手メーカーや自治体を装い契約を迫る悪質なケースもあり、国民生活センターや警察にも被害相談が寄せられています。特に高齢者が狙われやすく、高額な契約につながる事例も少なくありません。

本記事では、エコキュート点検詐欺の典型的な手口・実際の被害事例・安心できる依頼先の見極め方をわかりやすく解説します。

エコキュートの無料点検を装う詐欺の手口とは

「エコキュートの無料点検」を名乗って訪問してくる業者によるトラブルが、近年、増えています。こうした悪質業者は正規メーカーや電力会社を装い、点検を口実に契約を迫るケースが多く、高齢者を中心に被害が広がっているようです。

ここでは、よくある手口を具体的に解説します。

エコキュートのメーカー・有名な電力会社を名乗る

エコキュートの点検を騙る悪質業者は「自治体からの委託を受けています」「ご利用中の電力会社からの依頼です」などと名乗り、信じさせようとします。
最近は社員証を偽造して身分を装う悪質なケースも報告されています。

不安を煽ることばかり言う

「このままではお湯が出なくなる」「すぐに壊れる可能性がある」など、不安をあおる発言を繰り返すのも典型的な手口です。
冷静な判断を鈍らせることで契約に持ち込もうとします。

判断を急かす

「今なら特別価格で対応できます」「上司にもっと安くできるか相談するので少し待ってください」といった言葉で、即決を迫る流れを作るのも特徴です。

断りづらい雰囲気を作るのは、家族に相談させないこと=冷静な判断が入り込むことを防ぐのが、狙いと考えられます。

無料を謳う

「エコキュートの無料点検です」と言って点検を始め、実際には「すぐに給湯器を交換しないと危険です」と高額な契約を勧める手口も存在します。
「タダより高いものはない」という典型的な詐欺の流れです。

エコキュート点検詐欺の電話勧誘にも注意

訪問だけでなく、電話勧誘による被害も増えています。
電話でも大手メーカーを騙り、「すぐに契約を」と迫ったり、「このままだと危険です」と不安を煽るケースが多く、訪問と同じく注意が必要です。

エコキュートの点検をしないとどうなる?

「エコキュートの点検をしないとすぐに壊れるのでは?」と不安に思う方もいるかもしれませんが、基本的にエコキュートは飛び込み点検をしなくても、急に故障するわけではありません。

もちろん正規メーカーや施工業者による定期点検は必要です。逆を言えば、専門業者による定期点検さえ受けているエコキュートは、飛び込み訪問の業者による点検は必要ないのです。

正しい点検が必要かどうかを見極めるためには、取扱説明書やメーカー公式のサポート情報を確認するのが確実です。
「無料点検」を名乗る業者の誘いに応じる必要はなく、信頼できるルートで点検を依頼することが大切です。

エコキュートの点検詐欺による被害事例

図.PIO-NETにみる給湯器の点検商法に関する年度別相談件数の推移(国民生活センター「給湯器の点検にご注意ください」より

国民生活センターにも、エコキュートの点検詐欺に関する相談は増加しています。2022年から2023年にかけて相談件数は約3倍に増え、とくに70歳以上の高齢者の方が狙われやすい傾向にあります。

【相談事例】

・ガス会社だと思い点検を依頼し給湯器交換の契約をしたが、高額だった。
・自治体から委託されたという業者の点検後に温水器の交換が必要と言われた。
・今なら割引できると言われ契約したが、不審に思ったので解約したい。
・無料点検と言われ依頼したが、新しい給湯器への交換を勧められて契約したので解約したい。

参考:国民生活センター「給湯器の点検にご注意ください」

また、警視庁も点検商法への注意を呼びかけています。突然の訪問や電話勧誘に応じず、少しでも不審に思ったらその場で契約しないことが重要です。

参考:警視庁 点検商法

悪徳業者の見分け方

エコキュートの点検詐欺を避けるためには、業者の特徴を冷静に見極めることが大切です。

ここでは代表的な見分け方を紹介します。

突然の訪問は基本的にNG!

事前の連絡もなく、突然訪れる業者は要注意です。正規のメーカーや施工業者であれば、必ず電話や書面で事前連絡を行います。

身分証を提示しない

正規業者は必ず社員証や委託証明を提示します。名乗りだけで証明書を見せない業者は、信用しないようにしてください。

即決にこだわる

「今契約すれば安くなる」「すぐに工事が必要」など、契約を急がせる業者も危険です。時間を与えない手口は典型的な詐欺の特徴です。

点検詐欺に遭わないための対処法

悪徳業者を見抜くだけでなく、日頃から対策をとっておくことも重要です。安心して暮らすために、できる範囲で予防策を講じておいてください。

飛び込み訪問は居留守を使う

不審な訪問者が来た場合、玄関に出て相手の話を聞いてしまうと強引に契約を迫られるリスクがあります。迷ったときは無理に対応せず、インターホン越しや居留守で対応するのが一番安全です。

特に「無料点検」といった甘い言葉には注意してください。

「訪問販売・営業お断り」のラベルを貼る

玄関やポストに「訪問販売・営業お断り」のシールを貼っておくことも有効です。こうしたステッカーは法的効力を持つ場合があるため、訪問業者はステッカーの貼っている家は避ける傾向にあります。
小さな工夫ですが、未然にトラブルを防ぐ一歩になります。

さらに、シールに追加で商品名を具体的に追記しておくとより効果的です。例えば「給湯器関連の訪問販売、無料点検もお断り」といったふうに記載しておくと、特定商取引法に該当する可能性が高まります。

エコキュートを道路から見えない位置に設置する・目隠しする

エコキュートが道路から丸見えの場所にあると、悪質業者に「この家は狙える」と目をつけられやすくなります。外から見えにくい位置に設置したり、柵や植栽で視線を遮ったりすることで、不要な訪問を防げます。
特に人通りの多い住宅街では有効な対策です。

「高齢者の一人暮らし」がわからないようにする

高齢者の世帯は、詐欺業者に狙われやすい傾向があります。郵便物をため込まない、玄関先に生活感を出しすぎないなど、日頃から外部に「高齢者が一人で暮らしている」と悟られない工夫が大切です。
近隣住民や家族と連携し、見守り体制を整えておくことも安心につながります。

飛び込みの点検営業が実際に来た時の断りかた

突然訪問されても、その場で話を聞く必要はありません。はっきり断るのが一番ですが、言いづらい場合は口実を使って切り抜けるのもひとつの手です。

たとえば

「家族に相談します」
「家族が電気会社・給湯器メーカーに勤めているので結構です」
「年内には引越しをするつもりなので不要です」

などの言葉を返す方法も有効です。とにかく家に入れないように注意してください。

怪しい業者に契約してしまった場合の相談窓口

契約後に不審だと気づいた場合でも、クーリングオフや解約が可能なケースがあります。費用を支払う前に、まずは消費者ホットライン(188)へ連絡してください。

被害が大きい場合には、警察の生活安全課や自治体の消費生活センターでも対応してもらえます。早めに行動することで、被害を最小限に抑えることができます。

信頼できる点検の依頼先

点検を依頼するなら、「パナソニック」や「ダイキン」といった正規メーカーのサポート窓口を利用するのが安心です。正規ルートからの案内であれば、突然の訪問や即決を迫られることはありません。

ただし、点検は「自分から」依頼するようにしてください。パナソニックやダイキンなどの大手メーカーの名を騙り、突然家を訪問し、点検をすすめる悪徳業者もいます。

大手メーカーが連絡なく訪問することはありません。正規の依頼先と飛び込み訪問の違いを理解して、安心できるルートを選んでください。

エコキュートは10年が寿命の目安。不調前の予防交換がおすすめ

エコキュートを含む住宅設備は、一般的に10年程度が寿命の目安とされています。設置から年月が経つと、内部の部品や基盤が劣化し、突然「お湯が出ない」といったトラブルが発生することも少なくありません。

生活にこうした大きな支障をきたさないためにも、10年を過ぎたら壊れる前に予防的に交換を検討したほうが安心です。

また、最新のエコキュートは省エネ性や快適機能が大幅に向上しており、光熱費の削減につながるケースもあります。初期費用はかかりますが、ランニングコストの削減を考えれば長期的には経済的です。

さらに、エコキュートの交換では国や自治体の補助金制度を利用できる場合があります。対象機種を選べば数万円~十数万円の補助が受けられることもあり、実質的な負担を大きく抑えられる可能性があります。
「交換は高いから後回しに…」と思っている方も、補助金をチェックすればコスト面の不安を軽くできるので、交換を前向きに検討するきっかけになります。

交換を依頼する際は、施工実績が豊富で価格が明確な業者を選ぶようにしてください。信頼できる業者に依頼すれば、設置後のアフターサポートも含めて安心して使用を続けられます。

参考:【エコキュート交換業者の選び方】エコキュート交換はどこに頼む?|交換できるくん

まとめ|点検詐欺に注意して安心できる業者に依頼しよう

エコキュートの点検詐欺は「無料」「今だけ」「大手メーカーを装う」といった手口で迫ってきます。こうした飛び込み訪問や電話勧誘は基本的に相手にしないことが大切です。

もし契約してしまっても、消費者ホットライン(188)や警察に相談すれば対応できるケースがあります。詐欺に惑わされず、信頼できる依頼先を選んでください。